製品開発マネジメント

2005年11月09日

東証システム障害に思う(続き)

閑話休題(10)

東証システム障害に思う(続き)

11月1日に発生した東証システム障害の原因は富士通の指示ミスが主因との報道が7日夜に流れた。

富士通の指示ミスが主因 東証システム障害” これによると、’簀礇廛蹈哀薀爐侶膣戮鬟轡好謄狠甘の富士通と東証が事前に把握しながら、富士通の作業指示が不十分で適切に修正されなかったことが主因    ⊆莪が一定以上になると証券会社の注文が受けられなくなる売買プログラムの欠陥を、富士通が10月9日時点で発見していた。  東証も欠陥を確認し応急処置したが、同月13日に正式な修正作業をする際、富士通の指示書に欠陥修正について十分な記載がなく、東証側も気付かなかったため、プログラムの欠陥が放置された形になったという。

他の報道の、“富士通ミスが原因 システム障害 東証チェック怠る” によると、「東証によると、先月九日時点で、一定量以上の取引が集中すると注文処理が滞る恐れのある不具合が見つかった。  ただちに修正されたが、十三日に修正部分を正式なプログラムとしてコンピューターに取り入れる際、富士通から東証に渡されたデータの一部に記載漏れがあり、プログラム自体に欠陥が生じた。   東証も富士通から必要なデータを受け取ったかのチェックを怠り、欠陥が放置された。今後、メーカーの誤りを検証する態勢づくりに着手する。」とあります。

この2つの記事は原因について“作業指示ミス”“データの一部に記載漏れ”と微妙に表現が違っていますが、つなぎ合わせて原因の顛末を推測(あくまで個人的な推測)をすると、

1.10月7〜8日(金〜土)の処理能力を増強した、それにもかかわらず“一定量以上の取引が集中すると注文処理が滞る恐れのある不具合が翌日の9日(日曜)に見つかった”、応急処置(パッチプログラム)をF社が作り東証(東証システム)の了解のもとに慌てて埋め込んだ

2.F社が応急処置のパッチプログラムを正規の形でSI(システム・インテグレーション)評価して、正式な修正プログラムとして13日(木)に東証システムにリリースした。 多分、不具合部分のプログラムモジュールのみの入れ替えと思われ、この時に“作業指示ミス(例えば応急パッチの外し指示もれなど)”、あるいは、“データの一部に記載漏れがあり”(例えば適用すべきモジュール数や版数指示の漏れ・誤記など)があり、結果として因果関係は不明だが月替わりで再配置されたデータを読みに行けなくなる副作用が発生した。

上記はあくまで勝手な推測ですが、前回にも書いたとおり、前もって計画されたシステム増強の開発線表ではF社の社内評価システムでは徹底した評価がされたのでしょうが、実運用システムに適用して評価したときに特定条件で予定の性能が出ない障害が発覚して、大わらわで緊急解決せざるを得なくなり、つまり、「焦りのイレギュラー対応」「人間系のインターフェースにミスを誘発する」結果となったのではないでしょうか。

私もジャンルは異なりますが装置開発の責任者として、納期に追われた時の障害発生とユーザー対応の難しさ、大変さは何度も経験しました。 

イレギュラーなことを焦ってやる時、つまり、決められたルールではなく、非公式ルートで皆なの目が行き届かなくなりチェック機能が働かなくなるときが、思わぬ落とし穴や2次障害のリスクが大きくなるのです。

それにしても、F社の今日(8日)の株価はマイナス報道をもろともせずに、6%も上昇した由。 問題対応に追われているだろうSEの方達にはせめても救いかもしれない。

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2005年11月03日

東証システム障害に思う

閑話休題(8)

東証システム障害に思う

世界第2位の規模を誇る日本の証券取引の中枢である東京証券取引所が11月1日にシステム障害で3時間もダウンし大きな混乱が発生しました。 

報道によると「10月7〜8日に増強した売買システムにソフトウエアのバグが内在しており、このため月次バッチ処理後の11月1日に再配置されたデーターを読み出しに行かず、旧データーを読みにいこうとしてシステムダウンした」のが原因で、いわば単純なバグが内在していたが月替わりのシステム検証不十分で見つけられなかったという。 システム開発サイドからの詳しい実態報告を待たなければならないが、事実とすると信じられないお粗末さと言わざるを得ない。

読み込めなくなったのは、市場に参加している証券会社とその端末のコードを登録した「会員情報テーブル」で、東証は午後、手動で会員情報テーブルをデータベースに書き込み直し、システムを復旧させた。 (参考:【続報】東証のシステムが復旧、障害原因は10月上旬に更新したプログラム  http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20051101/223875/ )

ジャンルは異なるが企業の開発部門にいた者として、ここで思うのは「東証のような金融の根幹の重要システムのシステム検証で、何故単純なミスが発見できなかったのか? 月替わりの検証をやっていないなどはあり得ない!」という疑問です。

新聞の論説などでは、システム障害が続発しているのはシステムエンジニアの不足、技術力の低下、現場力の低下などが遠因として取り沙汰されています。 また、ハードは2重化されているが、ソフトは2重化の効果がなくソフトのフェイルセーフの課題が提起されています。

これはあくまで個人的な推量ですが、真の原因は報道されているような単純な話で月替わりの検証もれではなく、色々な要因が絡み合った結果ではないでしょうか。

 というのは装置評価や互換評価・システム評価における落とし穴に「擬似評価」があります。 システム開発を受注している企業は自社内に実運用システムのサブセット的な擬似システムを保守や開発評価のために保有しておく例が多いのですが、往々にして失敗しがちなのが、擬似システムでは徹底的に互換評価をやってOKの判断をしますが、実運用システムでは土日や場合によっては夜間半日しかシステム更新の時間がとれないから、実システムでの互換評価はほんの一部しかできずにスタートせざるを得ないのです。 結果として今回の東証の例のような結果になるリスクが高いのです。

最近のように変化のスピードが益々速くなり、24時間対応のビジネスが増えてきた時代には、システム増強や切替の安全なやり方も従来のやり方の延長線ではなく、一気ではなく部分切り替えや、ソフトの互換保障(例えば障害発生時は旧ソフトと直ぐに入れ替え可能など)、コストを掛けないで新旧システムを併用しながら移行するなどのシステム更新手法のブレークスルーが必要ではないでしょうか? 

そのような意味で、確かにシステム開発の現場を俯瞰してリスク回避する新たな手法導入を進めるなど、いわば開発手法の構造改革全体を見渡せるリスクマネジメント力が低下しているのは否めないかもしれません。

月替わり障害から想起して、思い出すのは2000年問題の年越し大騒動! 当時、19XX年から2000年への桁上げに対応したハード、ソフトになっていない古いコンピューター、パソコンが多く存在していて、どのような事態が起きるか予測がつかない、はてはコンピューター誤作動でミサイルが発射され戦争になるリスクまで真剣に分析がされたものです。 

当時、私の居たパソコン事業部でも、想定リスク分析や問題発生時の対応マニュアル作成、桁上げ対応済みのシステム更新を超特急実施、それによる2000年特需への出荷対応などなど大わららだった。私も大晦日から正月3が日を交代泊り込みで会社に待機したが、大山鳴動して鼠一匹も出ない拍子抜けの静けさながらも安堵したことを思い出します。

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2005年07月21日

不可解なディスカバリーの打ち上げ再開

閑話休題(7)
不可解なディスカバリーの打ち上げ再開
 

野口聡一さんらが搭乗するスペースシャトルのディスカバリーが13日に燃料センサー異常で打ち上げが延期されたが、本日(21日)のニュースで26日午前10時39分(日本時間同午後11時39分)に打ち上げるとの発表が流れた。13日の打ち上げ中止につながった燃料センサー異常の原因はまだ完全には特定できていないという

 

アメリカの威信をかけた超ビッグプロジェクトで、「原因が特定できていないままの打ち上げ再開」とは信じられないことである。

 

以下、ニュース記事の抜粋です。

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200507210006.html

 

“NASAのパーソンズ・スペースシャトル計画部長は、センサー異常の原因特定のために行ってきた検査プロセスがそろそろ終了するとして「原因として蓋然性の最も高いものは取り除いた」と説明。「一番いい方法は、秒読みを実際に行うことだ。こちらが予想するとおりにセンサーが機能すれば、26日に打ち上げる。何か不測の事態が起きれば、中止する」と述べた。”

 

CNNの19日のニュース記事の抜粋では、

http://www.cnn.co.jp/science/CNN200507190017.html

 

“ディスカバリーは、13日の打ち上げ直前になって、外部の液体水素タンクのセンサーが誤作動。打ち上げが延期された。原因究明が進められているが、まだ解明には至っていない。

CNNが得た情報では、NASAでは現在、以下のような点について話し合いがされているという。

タンク関連部分のテストをする――外部の液体水素タンクに燃料を注入するなど打ち上げと同じ状態を作り出し、センサーなどが正常に動くかどうかをみる。NASAでは今春、2回にわたってこのテストを実施。1回目ではセンサーに異常が見つかったが2回目では正常だった。これを受け、NASAは外部タンクを交換。センサーの不具合は解決されたとしていた。これ以降、今回の打ち上げまでテストはしていなかった。“

 

→常々、アメリカのNASAや航空宇宙産業の超ビッグプロジェクトの大掛かりなプロジェクト管理能力にアメリカ人は長けているな、日本人には真似ができないな、大規模システムの組織マネジメントはさぞかし洗練されているのだろうな−−との思いがあっただけに、今回の報道の液体水素タンクの燃料センサー異常の顛末は信じられない稚拙なレベルであり非常に不可解に思える。

 

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2005年07月19日

自動車産業とBTO(1)

BTO&SCM
自動車産業とBTO(1)
 

パソコン産業ではデル(Dell)のダイレクトモデル、即ち、BTOによるインターネット直販モデルが大成功を収めて、90年代後半からのインターネット革命下のパソコン業界を変革させた新しいビジネス・モデルの象徴となっています。

 

 それでは、他の産業ではBTOやダイレクトモデルの浸透や影響度はどうなのか、とりわけ、自動車産業ではBTOはどの程度広まっているのか興味が湧きました。

 

少し調べて見ると、結論から先に述べますと、2001年の米国の調査会社米フォレスターのレポートでは、「自動車販売にもBTO2010年には全体の20%に、自動車販売では,今後4年間で顧客が発注時に仕様を指定できるビルト・ツー・オーダー(built-to-orderBTO)方式が拡大する」との予測がされ、日本でも自動車のBTO販売が広がるとの見方でしたが、2005年の現時点では自動車販売のBTOはごく限定的で、自動車業界へ変革を投じる一石になっているとはとても言えないようです。

 

 国内ではマツダがロードスターの全販売台数の1割程度をBTO方式で販売しているとの情報で、適用車種もRX8なども拡大して唯一頑張っているようですが、これもスポーツタイプや高級車の機種に限定したBTO販売で、購買意思を示したユーザーに指定のマツダディーラーがコンタクトして最終売買契約をする、BTOによる価格メリットもわずかで、まだまだ、様子見の限定の域を出ない印象です。 マツダ以外のインタネット技術活用の取り組みは、トヨタのや総合EコマースサイトのGAZOOhttp://gazoo.com)やホンダのCyber Mallhttp://www.honda.co.jp/auto/)等 ディーラーに見込み客を紹介する顧客紹介システムでのインターネット活用であり従来の延長線に過ぎません。

 

最近は、新車販売よりも、大手自動車メーカーとの直接の縛りが緩い、中古車販売(中古車在庫検索・見積モデル、中古車買取モデル)で新興の独立系販売業者によるインターネット活用のビジネスモデルが盛んなようです。

(参考資料:

     自動車の Build To Order ネット販売革命 

http://www2u.biglobe.ne.jp/~hakuzou/dealer.htm

『インターネット自動車販売の変遷とBTO時代のディーラー機能』by自動車ニュース&コラム (http://blog.mag2.com/m/log/0000000772/106197721?page=1

 

BTO&ダイレクトモデルの本質は1)販売・流通面では「中抜き」でユーザーの欲する仕様で「安く」、「早く」提供すること、 2)生産・調達面では「注文を受けたものだけを造る」ことにより無駄な製品在庫や部材在庫を極小化することによる低コスト経営、

3)エンドユーザーとの直接の関係性構築によるフィードバック効果によるビジネスの維持拡大 ‐‐‐であり、原理的にはどの業種にもあてはまる内容のはずです。

 

自動車で2)の生産・調達面でのBTOがどの程度浸透しているのか良く承知していませんが、1)、3)の販売流通・ユーザーの下流が伴わないBTOであれば、あくまで生産工場での生産革新の範囲であり、サプライチェーン全体のSCM的な効果も限定的と思えます。

自動車業界ではBTO&ダイレクトモデルが鳴かず飛ばずであるのは何故か?

 

前回の「かんばんとBTO(1)」の記事にも書いたパソコンと自動車の商品特性の違い(オープンモジュールアーキテクチャvsクローズドアーキテクチャー)や、メーカー自前型の販売チャネルの特徴によるものか、自動車ではデルのようなしがらみのない革新メーカーが現れる余地がないのか、など興味深いところです。

 

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2005年07月15日

「かんばん」と「BTO」の概念比較(2)

BTO&SCM
「かんばん」と「BTO」の概念比較(2)
 

「かんばん」は販売所要がある程度平準化されたビジネスモデルを前提に効果を発揮する方式であると考えられます。

 自動車は前掲のパソコンとの比較からも判るように、下流の販売チャネルは自社系列の全国販売網を保有している関係から、自動車メーカー主導型であり、上流の部品ベンダーも垂直的(系列的)であり、平準化生産の実行がやり易いと見られる。

 

「かんばん」も「BTO」も、いずれも下流(市場/販売店)からのプル(PULL)の考え方だが、「かんばん」は平準化生産、つまり計画生産(BTP:Build To Planの枠組みのなかでサプライの流れが平準化されていること、消費されたものだけ「かんばん」を上流(生産・部材調達)まで引き継ぐことにより、自律的なスムーズな流れを作れる(後補充)ことにより、無駄を排除する方式が有効に機能する。

 

下流の変動に対しては、下流に近いところで製品在庫バッファにより吸収し、補充LTの長さ相当+緩やかな変動率分の製品在庫を持つのが基本である。

 

 一方,[BTO]は「注文生産」で、工場の中には製品在庫は持たず、部材、ユニットで持ち、注文確定により、注文を受けた製品を注文数だけ製品組み立てを行い,実働3〜5日で納入する方式である。

エンドユーザーの注文をDAILYHourlyでハンドリングして、最短のリードタイム(LT)で生産・納入することを追求し,それによって流通在庫やメーカー在庫である中間在庫(工場製品在庫など)を不要化またはミニマム化することが最大の眼目である。

 このため、BTOは下流の所要変動が大きく、日々の生産数量の変動も大きくなるため平準化生産が難しいパソコンのような業種にも適した方式と言える。

また、注文後に製品組み立てるため、CTOConfigure To Order:多様なカスタマイズ注文)が可能であるのが大きな特長である。

 

 従って、間接販売のパソコンビジネスの大きな課題である流通在庫の削減(在庫補填ロスの削減)には、プッシュ型の計画生産(BTP)比率を減らし、プル型のBTO比率を増大することが在庫削減や棚卸資産回転率の増加に大きな効果を発揮する。

 

特に個人向けパソコンの場合は、大きな流通在庫を抱えてビジネスをする量販販売店の商慣習や在庫補填の鮮度ロス費用の発生が大きな課題であり、流通在庫に加えて完成品の工場在庫を市場変動バッファにする(増やす)のは得策ではない。

 

 また、BTO化によりデイリー注文や週内多頻度注文へ移行することとなるため上流の部材調達のJIT化が有効に働き、その時に必要な部材のみ引き付けて購入することにより、部材在庫のミニマム化にも大きく寄与する。

その代わり、エンドユーザーのBTO注文に対しては100%の納入コミットを要求される。(生産遅れ、納入遅延は許されない)

 

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2005年07月14日

「かんばん」と「BTO」の概念比較(1)

BTO&SCM

「かんばん」と「BTO」の概念比較(1)

 

トヨタ生産方式のコア概念である「かんばん」方式とDellのダイレクト方式に象徴されパソコン業界で多く導入されている「BTO」との比較、相違について考えてみます。

 

「かんばん」方式はトヨタ生産方式JITJust In Time方式として日本の製造業の強さや生産革新の象徴的なキーワードであり、生産革新活動において、ある種のブランド的な意味を持つに至っています。

トヨタ出身の多くのOBが自動車業界以外の多くの企業の生産革新活動のコンサルタントや指導講師として迎えられて、「かんばん」方式をコア概念とした工場の生産革新を展開している事例が、マスコミなどでも取り上げられています。

 

「かんばん」方式は動きの激しいパソコン業界で完全にマッチするのだろうか?−−−が問題提起です。

 

まず、自動車業界とパソコン業界のビジネスモデルの違いを簡単に見ておきます。

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2005年06月30日

製品開発論の限界?

製品開発マネジメント
製品開発論の限界?
 

次のホームページ:技術革新型企業創生プロジェクトCorporate Innovation System Renaissance Project、略称ルネッサンスプロジェクト)に製品開発の論文として興味のあるディスカッションペーパーが掲載されています。

 

そのなかの、「新製品開発における不確実性低減のための開発前段階 (フロントエンド)におけるマネジメントの効果に関する研究 (未定稿) 長平 彰夫氏 、高橋 修氏 20053月)(ダウンロード可能:長文です)−−−を読んだ印象です。

 

要旨は「新製品開発における市場および技術の不確実性を低減するためにFFEFuzzy Front End:開発のはっきりしないフロントエンド)段階でのマネジメントが、成功する新製品開発に有効ではないかということを明らかにすることを目的に、大規模アンケート調査およびヒアリング調査を実施し、統計学的検証から明らかにした」という労作です。

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2005年06月27日

静かに去った98FELLOW

伝説の低価格機:98FELLOW(21)

静かに去った98FELLOW

95年1月に第三世代98FELLOWをリリースした後、95年7月に最後の98FELLOWとなるPC−9801BX4を発表しました。 このBX4は第三世代のBX3のCPUを486DX2/66Mにランクアップし、オプションだったWindowsグラフボードを標準搭載して、標準価格は9.8万円のまま据え置きとして実質値下げをした第三世代のマイナーチェンジ強化機でした。(添付のカタログ参照) 

最後の98FELLOW

95年はWindowsプリインストールのパソコンが主流となり、米国で大きなヒットをしたWindows95の日本での発売待ち、Windows95プリインストールのオールインワン・パソコンの発売待ちに耳目が集まる状況でした。

 

 この最後の98FELLOW(PC―9801BX4)は、DOSパソコンでありながら、Windowsへのシステムアップも容易でお買い得でしたが、やはりパワーユーザ向け、DOSの2台目ニーズが中心でした。 時代はパソコンの大衆化、初心者向けオールインワン・パソコンへと転換をしていました。

もはや、98FELLOWはそれほど大きな注目を集めることはありませんでした。

そして、この95年を最後に98FELLOWは3年間の足跡を残して静かに消えていくこととなりました。

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2005年06月26日

パソコン市場転換の年:1995年

伝説の低価格機:98FELLOW(20)

パソコン市場転換の年:1995年

 

第三世代98FELLOW(PC−9801BX3/BA3)は「低価格宣言。98FELLOW」と銘打ち、エントリー標準価格9.8万円で、95年1月に発表・出荷されました。 「国内大手のNECが遂に9万円台のパソコンを販売開始し、パソコンも遂に標準価格でも10万円を切る時代になった」と大きな話題になりました。 

売れ行きの伸びも95年前半は好調に推移しました。

 

しかしながら、それは結果的に消えゆく運命にあるDOSパソコンの最後の輝きにも似たものでした。

時代は「DOSからWINDOWSへ」の転換がはっきりとして、95年後半からはWindowsプリインストール・パソコンが主戦場となっていきました。

 

95年はWINDOWSパソコンが大きく花開いた年で、95年7月に米国でWindows95が発売され、4ヶ月遅れの95年11月には日本でもWindows95が大々的に発表されました。

 

Windows95はWindows3.1に比べて、分かりやすいGUIやマウスによる使い勝手の改善、32ビットプロテクトモード・カーネルによるマルチタスク化、ネットワーク時代を意識したTCP/IPなどネットワーク機能強化が行われたOSで、今につながるWindowsOS全盛の実質的な元祖となったバージョンでした。

 

このWindows95は発売前からマイクロソフトの大掛かりな宣伝や各メーカーとのタイアップ効果もあり、95年11月23日の深夜零時の秋葉原や大阪の日本橋の量販店での発売開始で長蛇の列ができ大きな盛り上がりを見せました。 マスコミでも社会現象として話題となったので、ご記憶の方も多いと思います。(私もこの時、秋葉原に駆り出されていてその時の喧騒を目の当りにしました。)

 

この1995年が次のような意味で日本のパソコン市場が大きく転換した年となりました。

 

Ref:Windowsの20年 - その足跡のすべて、そしてVistaへ

 

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2005年06月24日

第三世代98FELLOWの低価格設計

伝説の低価格機:98FELLOW(19)
 
第三世代98FELLOWの低価格設計
 

最後のDOSパソコンとしてトリを務めた第3世代98FELLOWの開発コンセプトは第一にエントリー価格9.8万円の値付けができる徹底した低価格設計、第二にDOSからWindowsへの流れが明瞭になって来ており、WINDOWSパソコンとしても十分に使用可能であること、第三に金科玉条の互換性・信頼性の維持、および、作りやすい設計 −−−−でした。

 

エントリー価格9.8万円のPC−9801BX3は、その前の第2世代のPC−9801BX2の標準価格が17.8万円でしたから、実に45%もの値下げとなる非常にハードルが高い価格設定でした。

 製品企画部門のこの目標価格提案に対して開発部隊から見ると、とても実現できそうにないことが判っていました。

一方で、「10万円を切った9万円台」ということでないと、宣伝文句的にも、他社競合上も市場インパクトが打ち出せないことも理解できました。

 

初代98FELLOWの「2ヶ月の超速開発」とは異なり、第三世代98FELLOWは「9.8万円の破壊価格の実現」を達成するべく、時間を掛けて施策を廻らしました。

 

この時の低価格設計のポイントとなった主な考え方を参考に紹介します。

コスト低減の基本は、

ヽ発に限らず製品企画や生産・調達まで「総合的に考える」

∪澤彜慙△「枯れた技術・部品」、「1ランクダウン」の設

 計・部品の採用 

E按譴靴「塵積も」 ――−です。当然ながら品質や互換性のレ

 ベルは落とさないのは大前提です。

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2005年06月14日

海外ベンダーの選び方(2)

パソコンの海外調達(5)
海外ベンダーの選び方(2)
 

次期98FELLOWの海外調達の挑戦とそのODM先の決定については、我々にとっても初めての経験であり、慎重に事を運びました。 

次のようなやり方やポイントで、どのベンダーが良いかの選定判断をおこないました。

 

1.事前に見積もり合わせ結果を入手する

台湾と香港のODM候補各社に対して、現地訪問の前に、「サンプル・マザーボード」の見積もり合わせ資料(主な仕様(主要部品表、回路図、外形サイズ・プリント基板設計仕様)、調達量、質問表など)を提示して、事前に先方からの回答を入手してから、現地で質疑応答を行い確認する形式としました。

 

<判断方法>

各社の見積もり回答を横並びで比較する。 各社の回答内容から非常に多くのことが読み取れます。 単に価格の安い・高いだけではなく、そのベンダーの特徴、性格、組織力などが見積もり回答書から読み取れます。 例えば、

    そのベンダーの我々の商談に対する熱意の程度

    部品レベルの価格積み上げリストから、その会社の技術&資材部の低価格部品サーベイの能力や価格の精度、技術部隊の回路を読む力、 など

    質問表に対する回答内容、やりとりの対応スピードの速さ、などからその会社の営業と技術の連携の良し悪し

 

2.ベンダーの主任エンジニアとダイレクトに話しをする

  各ODM訪問時には、今回の案件で主担当となるエンジニアと上司の技術マネージャーとの質疑応答の時間を設け、技術部のフロアと実験室も見学をさせてもらうこととしました。

 

<判断方法>

  ダイレクトに話をすることにより、そのベンダーのエンジニアのセンスの良し悪し、真面目かハッタリを言っているのか、スキルの程度など、ある程度の見極めができます。 

例えば、最新のCPUやチップセットに通じているか、PC98アーキテクチャとPC/ATアーキテクチャーの違いの部分を理解できるか、生産技術にも詳しいか、などです。

 

この時、感じたのは台湾ベンダーのエンジニアの方が、香港のエンジニアよりも最新技術に詳しく技術センスが良いということでした。 英語能力も片言の私などよりも格段に優れていました。

 

聞いてみると、台湾はアメリカに留学した帰国エンジニアが既に結構多くいて、シリコンバレーなどともパイプがあり、当然ながら米国のPCの最新技術情報に貪欲でした。 アメリカ流儀の若いエンジニアが、2つ、3つの開発を常に掛け持ちで担当している(台湾では当たり前)とのことで、日本人エンジニアとの対比で「うかうかしておれないな」と感じたものです。

 

3.日本向けのビジネスをどれだけ重視しているか

 

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2005年06月13日

海外ベンダーの選び方(1)

パソコンの海外調達(4)
海外ベンダーの選び方(1)
 

93年春から次期98FELLOWの更なる低価格化を目指して、台湾・香港地区のODM(Original Design Manufactured の具体的な選定に着手しました。

 

その頃の台湾・香港の電子産業の状況は、70年代にカラーTV、テープレコーダー、電子玩具などの日米資本が台湾に進出して、その組立産業が興り、それらに使う地場の電子部品産業が急速に成長しました。

 その後の80年代は人件費の上昇で、TVや玩具などの付加価値の少ない組立産業は苦しくなり、80年代初めから産・官・学を挙げてパソコン産業への転換に軸足を移していきます。 

 

80年代半ばに産・官・学の成果をもとにパソコン産業に進出した第1陣の老舗に「エイサー」「マイタック」などがあります。

80年代後半からは多くの新興のPCメーカー、ボード・部品メーカーが出現していました。 80年代末〜90年代初めの頃は、電子部品産業の集積を強みに、北米パソコン大手からのOEM生産が伸び出した時期でした。

 

93年頃は、92年の北米でのコンパック・ショックによるIBM PC/AT互換機の低価格の流れが加速し、皮肉にも欧米の多くのパソコン大手が、パソコンを安く作れ生産能力もある台湾にOEM生産を委託せざるを得なくなっていました。

この時点では、日本のパソコン大手は、パソコン本体やマザーボーはまだ国内生産オンリーでした。

(参考:1.コンパック・ショックは台湾の救い神 、2.台湾パソコン産業の発展要因の分析:神戸大学 伊藤宗彦氏他)

 

さて、以前にも書きましたが、98FELLOWの海外調達方針は、初挑戦のリスクも加味して、次のようなベンダー選定条件だったと記憶しています。

 

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2005年06月10日

海外調達の損得勘定(2)

パソコンの海外調達
海外調達の損得勘定(2)
 

前回、海外調達のコスト効果のシュミレーション例(台湾、マザーボード)を示しました。

内外価格差、つまり、日本に比べて台湾が安い部品の価格差や人件費差をダイレクトに反映出来る訳ではなく、日本に持ってきて売る場合に、輸入関連諸経費や色々なオーバーヘッド費用を差し引いた部分が実質的なコスト低減額となることに留意が必要です。

 

それ以外にも、海外調達の損得勘定で考慮しなければならない重要な点があります。

 

それは、「国内の工場稼働率」の問題と「海外調達のリードタイムの長さ」の問題です。

1つ目の「国内工場稼働率」の問題は、海外生産に移したために国内の工場が空洞化して稼働率が大きく低下するのでは本末転倒であり、総合的な損得勘定が合いません。

 

国内工場には、多くの従業員や生産設備があり固定費用が発生しています。 その固定費用を回収して適切な利益を出し続けるためには、工場の生産稼動をある水準以上に保つ必要があります。

また、大きな会社の工場では、地場に多くの2次、3次外注の協力工場を抱えている場合が多く、企業城下町的な共存共栄の状況になっています。

 

つまり、国内工場をたたんで海外シフトをするならば別ですが、国内工場の稼動を維持しつつ、海外調達を併用して、どのようにコストメリットを出していくかの方法論が重要となります。

 図2:パソコンのライフサイクル

2つ目の「海外調達のリードタイムの長さ」の問題は、その業種の市場特性によっても影響度が変わってきますが、パソコンの場合は、その商品特性から所要変動が非常に激しい特性があります。(図2:パソコンのライフサイクルを参照)

 年4回の新製品リリースのホット・シーズンでは生産ラインをフル稼働しても追いつかない状況ですが、新製品発売後の需要のピークは2〜3ヶ月しかありません。 また、その間の所要も大きく振れて、所要予測がなかなか当たらないことが多いのです。 先週の工場稼動率は100%だったが、今週は50%以下というような変動が大きくなることもよくあり、「平準化生産」がなかなか難しい特徴があります。

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2005年06月09日

海外調達の損得勘定(1)

パソコンの海外調達

海外調達の損得勘定(1)

次期の98FELLOWから、更に低価格化を目指して初の海外(台湾)からの調達に踏み出すべく予備調査が始まりました。

後に95年1月に遂に10万円を切った9.8万円の標準価格をつけた第3世代98FELLOWの「低価格宣言! PC9801BX3」として発売されることとなります。

 

低価格を実現する手段として、よく海外生産・調達(最近では中国生産)がキーワードとして出てきますが、それでは、当時の台湾からの海外調達で本当にどの程度安くできるのでしょうか? まずは、その目安を立てるシュミレーションが必要です。

 

一般に海外調達すれば「3、4割は安くなる」という安易なイメージがありますが、商品によって事情が異なりますし、最近は正確には承知していませんが、パソコンの場合に海外に生産を移すだけで簡単に3割以上も安くなるならば、苦労はありませんし国内製造工場は壊滅してしまいます。

 図5:海外調達のコスト効果

93〜94年頃のパソコンの例では、プリント基板や電源盤などの特定の部品は台湾が2割程度安かったですが、日本での調達価格とそれほど変わらない部品もあり、価格差はまだら模様で、積み上げ比較をする必要があります。 また、当時の台湾の人件費は日本と比べてワーカーが1/3程度、技術者が1/2程度でした。

[↑図:海外調達のコスト効果のシュミレーション例]

 

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2005年06月06日

間接販売と直接販売(直販モデル)

BTO&SCM

間接販売と直接販売(ネット直販)

 

黒船パソコン上陸が話題になった92〜93年頃は、日本におけるパソコン販売は個人向けには家電量販店やパソコン専門店での店頭販売が主流、企業向けには企業向けの卸系販売会社やシステム販社経由の販売が主流で、つまり流通チャネルを通した「間接販売」が主流でした。

 

「パソコンのネット直販」という新たなビジネスモデルは、その当時はまだまだインターネットも一般に普及をしていない時代で「ネットで直接販売する」ビジネスモデルについて、今日のように個人向けにも幅広く一般化するとは予想されていませんでした。

 

パソコンの世界で直接販売(直販モデル)が始まったのは93年1月にDELLが日本法人を設立してDELLダイレクトモデルと称して企業向けを中心に販売を開始した時でした。

これは最初は静かなスタートでしたが後の90年代後半には大きな市場改革(ネット直販&BTOSCMCRM)を引き起こした「第2のパソコンの黒船」とでもいうべき大変革の始まりでした。

 

では、パソコンのネット直販のビジネスモデルの最大の強みは間接販売に比べて安い価格で勝負できる点ですが、その「からくり」や「強みと弱み」はどのようなところにあるのでしょうか?

 

<直販モデルの強み>

1)販売店など下流の流通チャネルを通さないため、販売店の販売手数料やサポート費用などの中間マージンが掛からないため、その分、販売価格を低く設定できて価格優位性を出すことができる。

2)直販のため、販売店販売と比べて流通チャネルには基本的に製品在庫は存在しえない。従って売れ残りなどの流通チャネル側の不良性在庫資産を原理的にはゼロにできる。

3)ネット直販がメインであり、BTO(Build To Order:注文生産方式)としごく相性が良い。つまり、その日に注文を受けたモデルを注文台数だけ生産して売り切ることができ、原理的には工場側でも製品在庫をゼロとすることができる。

(但し、製品を作るための部品レベルでのある程度の在庫は必要)

4)「直販」の意味は、自らが中間チャネルを介在せずにエンドユーザーに売るということであり、売れ筋モデルの傾向や顧客の好みの変化などをきめ細かくダイレクトに把握ができる。従って市場分析を歪みがない形で迅速に実施できる。 それを販売戦略や新製品企画に的確に活かせる優位性がある。

 

このように見ると直販のビジネスモデルは良いことずくめのようですが、直販モデルは直販であるが故の弱み・短所も存在します。

 

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2005年06月03日

いよいよ工場出荷開始!

伝説の低価格機:98FELLOW(16)
いよいよ工場出荷開始!
 初代98FELLOW:9801BX

98FELLOWの開発プロジェクトは黒船パソコン迎撃のミッションを受け、92年10月末から12月末までの超速開発2ヶ月間を熱気に浮かされたように一気呵成に走り続けました。 

師走も押し迫りクリスマスのジングル・ベルが華やかに流れていた頃に、ギリギリで量産移管判定会議に間に合わせて何とか「量産移管GO!」となりました。

 

量産移管判定会議とは、前記の互換性評価結果レポートや開発部の各種評価レポート、生産部隊の生産性評価レポート、特別検査結果、VCCIやノイズ、温度耐力試験などの環境評価レポート、意地悪テスト(意図的に異常な操作の組み合わせをやる)、安全性評価などの各種レポートを元に、信頼性品質管理部が第3者的立場で量産移管Go/NoGoの審査をする大きな関門でした。

この判定会議には未解決の技術問題はZeroにしておくことが合格の前提条件です。

 

従って、判定会議の前の10日間は徹夜作業の連続となって、多くのメンバーが実験室で朝焼けを眺めてから、ひと時の仮眠に帰る毎日の繰り返しでした。 前日なってソフト部隊から互換性評価での新たな間欠障害の申告を受けて焦ったものですが、それも優秀なメンバーが短時間で片付けてくれてほっとした記憶があります。

 

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2005年06月02日

開発管理のノウハウ(3)

伝説の低価格機:98FELLOW(15)

開発管理のノウハウ(3)

 

3.外部の力を最大限利用し一気呵成にやる

 

PC98シリーズは「互換性維持」が金科玉条であり、その互換性評価のために1ヶ月以上の期間を費やし多大な工数を投入していました。 しかしながら、この互換性評価の仕組みは新製品の完成度・信頼度を上げる重要な関所となっており、国民機と言われたPC98シリーズの強みとなっていた組織能力の1つでした。

 

互換性評価は外部の3rdパーティの主要なソフトハウス(ISV:Important Soft Vendor)と拡張ハードベンダー(IHV:Important Hardware Vendor)の数10社には、量産相当の量産先行機(PP機:Pre Production)を配り、ISV&IHV側にも互換評価を依頼していました。 当然、社内でもソフト開発部門、SI(システム・インテグレーション)評価部門、および我々の装置開発部門(ハード主体)でも分散して実施していました。 

ところが、98FELLOWの開発リードタイムは2ヶ月という超短期間であり、互換性評価に1ヶ月も掛けている余裕はありませんでした。

98FELLOWはDOSがメインのOSでしたが、それ以外にも、UNIX−OSでの互換性や拡張グラフを搭載したWindowsマシンとして互換性確認も必要でした。

 

そこでリードタイム短縮のために採った手法は次のようなものでした。考え方は「フロント・フォーカス(後工程の前倒し)」と「3rdパーティも巻き込んだ短期集中」でした。

 

1.「味見」を早くやる

元来、互換性評価は後工程の量産直前の「量産先行機」でソフト部門、互換評価部門に依頼するルールとなっていましたが、そんなルールに拘っていては出荷日程がキープできません。 量産先行機の前段階のバラック評価機(正式なシャーシではなく手作り板金でバラック的に作った評価機)をソフト部門などにも余分に配り、互換性評価を全項目ではなく、基本項目のみ「味見」評価を先行し、正式評価も後から実施する「2段構えの互換性評価」とする提案をして何とか受け入れてもらえました。

この結果、早い段階で問題を発見して設計変更にフィードバックすることができました。

 

2.外部を上手く巻き込む

ソフトハウス、ハードベンダーに集中互換評価フロアを提供し外部の互換評価を迅速に終わらせる策をとりました。

 

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2005年06月01日

開発管理のノウハウ(2)

伝説の低価格機:98FELLOW(14)

開発管理のノウハウ(2)

2.フロント・プロセスを最重視する

「開発プロセスとは不確実なものを確実にしていくプロセス」と言われます。不確実な要素を早い段階で確実にしてゆくためには開発のフロント・プロセスへの取り組みが重要です。

開発プロジェクトの成否は開発のフロント・プロセス(前工程:仕様FIX、開発リスク分析、開発線表作成、設計&デザインレビュー、試作機評価ーーなどの開発の前段プロセス)を重視して、如何に練った開発計画を作成できるかによって8割方は決まってしまいます。(フロント・フォーカス重視)

図4:フロント・フォーカスの重要性

 図4はフロント・プロセスのマネジメントに失敗して、技術問題を完全に解決できないで積み残したまま後工程に移行して、結果として後工程で問題が多発し、その対策に多大の対策工数を費やした失敗プロジェクトのイメージ例です。

黒線は計画した投入工数ですが、実績は赤線の投入工数となり後工程で大幅な追加工数を投入せざるを得なくなっています。 そうなった原因は次のようなことが考えられます。

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2005年05月31日

開発管理のノウハウ(1)

伝説の低価格機:98FELLOW(13)
開発管理のノウハウ(1)
 

開発部の体制を前述のマトリックス・コンカレント体制に変更して各機能チームが同時並行的に動ける枠組みは作りました。 しかし、この枠組みが上手く機能するためには実オペレーション、開発進捗管理のやり方、つまり「仏に魂を入れる」ことが大切です。 それには製品特性や各々の組織に合った効率的な進捗管理方法を見出すことが必要です。 それが、外には見えてこない一般論として「文章化することが難しい各企業固有のノウハウ」となってきます。

 

98FELLOWの超速開発で採った進捗管理で有効だったのは次のようなやり方でした。

 

1.デイリー進捗会議

 1日1時間の短時間に限定して各開発機能チームリーダー全員が参加し、未解決問題とその調査報告を行い、全員で方向性が正しいか、次の攻め方を即断し誰が何をやるかを指示するフェース・ツー・フェースの打ち合わせです。

  新製品評価では色々な予期できない問題が次々と発生します。それを如何に早く間違いなく片付けるかが日程キープのポイントです。 また、変更・修正に伴う手配変更指示などの外部への整合された情報発信体ともなります。

 

  ヾ峽臂祿欧魯灰鵐レントに加速的に調査する

  とくに厄介なのが、数日間ランニングさせておいても1〜2回しか問題現象が出てこない「発生頻度の少ない間欠障害」です。

  1日に1回出るか出ないかの間欠障害ですから、調査も2つ3つの案を並行して実験することと、特に間欠障害は評価台数を一気に増やして障害発生頻度を高める(評価を加速させる手法)を採るなどして、どの方向が真の原因に早くヒットするかをコンカレントにどんどんPDCAを短時間で回す必要があります。

  

  各チームの進捗を同期化させるための手を打つ

  装置まとめチームは各開発チームの進捗の良し悪しを把握して日程の微調整や応援リソースなどの手当てをデイリーでダイナミックに行う。

  また、各チームは全体の動き、他のチームの情報把握をしながら、自律的に自分のチームが次にやるべきことの判断を早くつけることができます。

 

  5蚕兌圓泙せにしないで問題を早く「まな板」に乗せる

   往々にして難しい問題の解決は担当の技術者のスキルやセンスにより左右される面が大きく、技術者が判断を間違ったり迷路に入り込んだりすると多くの時間を浪費してプロジェクト全体の日程に大きな影響を与えます。

  そのためにデイリー進捗会議で、各チームが抱えている問題をオープンにして(まな板に乗せて)他人の目を入れて揉むことや、色々な実験をコンカレントにやる手を打つことが大切です。

 

    生産・資材部隊が早く動けるようにする

   デイリー進捗会議で出た変更情報(変更がありそう情報も)をとにかく「生情報」で良いから流して、手配中止/追加や改造準備などを生産・資材部隊が早く自律的に動けるようにすることが、日程を早めることや無駄なロス費用を発生させないために重要です。

 

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2005年05月29日

マトリックス・コンカレント開発組織

伝説の低価格機:98FELLOW(12)

マトリックス・コンカレント開発組織

 

PC98シリーズは93年以降にDOS/Vパソコンとの競合激化、Windowsの浸透、低価格化の進行、ノートPCの立ち上がり、機種の多様化、などによりパソコン需要が大きく拡大し、それを受けて新製品も年間20機種以上をリリースする「多機種フルラインアップ時代」に突入しました。

 

先にも書きましたが、当時の主力開発・生産拠点の1つであったNEC新潟のPC開発部(第1技術部)でも年間5、6機種の新製品を矢継ぎ早やに開発してリリースする必要に迫られました。

 図3:マトリックス・コンカレント開発体制

限られた開発人員で新製品をコンカレントに開発し、かつ納期を厳守できる効率的な開発体制を構築する必要があります。

98FELLOWの超速開発が始まる92年当時の開発人員は約90人でパソコン開発に必要な自己完結できる開発ファンクションをほぼ自前で持っていました。

 

新製品の開発リードタイムは新世代機など新規性が高いモデルは10ヶ月前後、後継機など強化モデルは半年前後のリードタイムが掛かっていました。 従って、年間5機種の新製品をリリースするためには、同時に3、4機種の開発をコンカレントに走らせる能力が必要です。 加えて、出荷済みの製品についても問い合わせ対応、障害調査や原価低減のVE設計などのメンテナンス業務も必要でした。

 

そこで、採った開発組織は図3のマトリックス・コンカレント開発体制です。

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2005年05月24日

製品開発の考え方が分かる本

製品開発マネジメント
製品開発の考え方が分かる良書
 
企業の生命線は売れる「製品の開発」です。 ところが、製品開発とは何か?はあまり表にでてきません。 製品開発という特性上で表に出にくいことや、多種多様な製品があり、その開発のやり方も多様であることから一律でくくれない面があり、学問的にもあまり体系化されていません。 
 
延岡健太郎氏の「製品開発の知識」(日経文庫)は製品開発の戦略的、組織的体系の本質や考え方がわかりやすく、文庫本としてコンパクトに説明されています。
 
忙しく開発に携わる方も「開発とは?」を鳥瞰図的に振り返ることも必要ではないでしょうか? また、企画、営業、SE、生産技術などの方にも参考になると思います。
 
本のまえがきに次のような記述があります、「製品開発は創造的で夢のある分野です。 しかし、それだけにマネジメントが最も難しい分野でもあります。」
 
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2005年05月23日

コストの壁を破るノウハウ(2)

 伝説の低価格機:98FELLOW(11)
 コストの壁を破るノウハウ(2)

 

コスト低減の王道は「設計のみならず総合的に考えて、早い段階で打てる手を徹底して実行する」ことです。 98FELLOWの開発を通してどのような考え方が役に立ったかをご紹介します。(結果的に後から判ったこともあります)

 

1.製品コンセプト・仕様を早く明快にする

98FELLOWは「黒船パソコン対抗」&「低価格最優先」&「DOS専用機」(上位の98MATEと棲み分け)の製品コンセプトがクリアで早い段階でFIXしました。

  従って、98シリーズの金科玉条だった「過去機種との互換性維持」も98FELLOWの製品コンセプトと照らして、影響が少ない互換性は切り捨てる決断ができコスト低減につながりました。 次のような項目です。

   ・HDDはファイルスロット形式(SCSI方式)を止め、主流となりつつあり廉価な作りができるIDE方式を採用

   ・ビジネス用途ではFM音源をあまり使わないため、BEEP音のみとした。

   ・外部接続の拡張FDDインターフェイスをオプション化

・拡張ボードスロット4スロット→3スロットに削減(98MATEの下位シリーズのため)

    しかし、Windowsグラフ・アクセラレータやFM音源ボ−ドなどのアップグレード・パスを提供、CPUは黒船パソコンの上を行く486SX/20を採用するなど、ユーザーに受け入れられる手も打っていました。

 

    また、当然ながら、上位の新シリーズ98MATEとの部品共通化を図り、部品の大量調達により安く調達することも設計条件としました。

 

2.フロントプロセス・フォーカス

  設計や評価のフロントプロセスに集中してリソースを掛けて完全にバグ出しをしてしまうこと、量産移管時点ではお金の掛かる改造・変更は絶対に出さないことです。

  これは当たり前のことですが、短納期であり完璧にやることはなかなかに難しいのです。 往々にして潜在問題を残したまま、量産工程に入った後で問題が顕在化し、生産ストップ&特急改造や部品変更による大きな損失が起こり得ます。

図2:パソコンのライフサイクル 

  特に、パソコンの市場特性から発表・出荷開始日までに、数万台規模の作り溜めをします。 98FELLOWの時は出荷開始日までに5万台の作り溜めが必要でした。 さらに、パソコンのライフサイクルは5ヶ月から6ヶ月で、なおかつ、最初の3ヶ月でライフ総量の80%も占めています。(図2:パソコンのライフサイクル を参照、クリックをして拡大)

  従って、量産移管時点に如何に設計品質が上がっているか、作りやすく生産品質が高くなっているかが、コスト低減に重要なのです。

 

  10万円で売るパソコンに1台当たり数千円も改造や追加部品・変更などの損失費用(オーバヘッド・コスト)が掛かったのでは利益は出せません。

 

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2005年05月22日

コストの壁を破るノウハウ(1)

伝説の低価格機:98FELLOW(10)

コストの壁をやぶるノウハウ(1)

 

先に書きましたように、98FELLOWは前機種のPC−9801FAの半値の標準価格が目標です。 超短納期の壁に加えて、もう1つの壁は利益が出せるコスト企画が果たしてできるかということです。

結論からいうと、大枠のコスト削減方針を決めて見切り発車をした、結果は後から何とかなったということでしょうか。 とにかく時間がなかったのです。

しかしながら、98FELLOWの開発を通じてコスト削減の考え方についても大きな示唆を得ることになりました。

 

よくコスト削減の事例で、「乾いた雑巾をさらに絞る」とかの精神論や「LSI化して部品削減とか」とかの部分集積論、「コストは設計の良し悪しで決まる」とかの設計責任論、「中国生産でコスト大幅削減」とかの中国一辺倒論、を見聞きしますが全て「部分論に終始」している気がします。  コスト企画は表には見えにくいものですが、総合的な方法論(組織横断のコストのベストプラクティス能力とでも言うべきもの)として捉える必要があります。 

というのは、

 

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2005年05月20日

納期の壁を破る

伝説の低価格機:98FELLOW(8)

納期の壁を破る 

                                 

図1:98FELLOWの開発リードタイム

9210月末に「98FELLOW疾風開発プロジェクト」を立ち上げ、全員がミッションを共有してベクトルを合わせる「キック・オフ会議」を済ませると、NEC新潟工場は急に熱気を帯びてきました。

 

まず、最大の壁は開発リードタイム2ヶ月の壁です。 図1に当時の標準の開発線表と98FELLOWで設定した開発線表の比較を示します。(図1をクリックすると拡大します)

 

スタート(S)から1.5Wで回路設計完(D)、5Wで量産先行機組み立て完(PP)、そこから各種評価や互換評価をして9W目に量産製造の移管可否を判定(MP1)し、5万台の作り溜めを行い11W目に量販店向け先行出荷、12W目に発表・出荷開始(MPF、93.1.17)という、標準の開発リードタイムに比べ半分以下の無謀とも思える開発線表で突っ走るしかありませんでした。

 

窮すれば通ずるの例え、そこで打った手は次のようなものでした。


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2005年05月19日

製品開発力とは?

製品開発力とは?

 

日本企業の製品開発力についての示唆的な講演論文を読みましたので紹介します。

藤本隆弘氏の「日本企業の製品開発力」(組織能力とアーキテクチャー)です。

要旨は次のとおりです。

 

    日本の企業の大きな問題は、「現場は強いけれども会社は儲からない」という企業が多い。、お客さんの評価としての「表の競争力」と「裏の競争力」は別物、裏の競争力は海外に比べ結構強い。つまり生産性、生産リードタイム、開発リードタイム、製造品質、歩留まりなど、現場の実力は強い。

 

    アメリカの企業はどちらかというと「強い本社、弱い工場」、日本の企業は「強い工場、弱い本社」

 

    どういう製品を造っている会社が強いのかを見極める上では、アーキテクチャ(製品をどのような部品とインターフェースで実現するかの設計思想)に注目すべき

 


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