2007年02月16日

デル、ダイレクトモデル失速の意味すること

日経新聞2月2日朝刊で、『デル創業者、CEO復帰。直販モデルの修正必至。個人取り込み課題』と報じています。

デル(DELL)は1997年にIT技術を活かしてネット直販ビジネスを日本でいち早く開始し、この時に出現したのが、パソコンの第三の黒船と言える“デル・ダイレクトモデル”です。(ブログ記事「パソコンの第三の黒船」参照)

私は現役時代に、このデルの脅威に対抗すべく、デルのダイレクトモデルをお手本に、自社の間接販売(販売店販売)に「BTO&SCM」方式を導入するべくBTOプロジェクトを立ち上げるなど躍起になっていた。 私にはこのデルの失速は、パソコンのビジネスモデルが重要な転換期に来ているサインのような気がします。

前掲の日経新聞記事やデル関連のネット検索ニュースから、その背景は次のようです。

・デルの成長鈍化がはっきりしたのは、2006年から。増収率が1桁台に落ち、二・四半期続けて純利益が前年を下回った。 01年から守り続けていたパソコン世界シェア首位の座をHP(ヒューレットパッカード)に昨年後半から奪われた。

参考:2006年第4四半期の世界PC市場は好調HPが首位,Dellは苦戦

・経営建て直しのために、マイケル・デル会長が2年半ぶりにCEOに復帰。

参考:M・デル氏CEO復帰が意味するもの--デルは何を見誤ったのか? デル失速の要因として次のような「市場変化への対応遅れ」を指摘している。

同社は、回転の速いPC製造体制を完成させていたが、以下のような市場の変化への対応で明らかに不意を突かれた格好となった。

  • Y2K騒動から3年続いた法人のPC買い換え騒動が終息し、Microsoftの「Windows Vista」と各社社内アプリケーション環境の組み合わせに関する様子見の状況にあるなか、法人PC市場が鈍化を見せている。
  • 消費者は、つまらないPCと粗雑な顧客サービスに対して不満を募らせており、スタイリッシュで品格のある新しいPCを求めて小売店に殺到し始めている。
  • Advanced Micro Devices(AMD)がかなりのマーケットシェアをIntelから奪い、法人と個人の両方にとって信頼できるメーカーとしての地位を築き上げた。 (デルはIntel CPU使用に固執していた。)
  • 米国などの成熟した経済大国ではノートPCがかつてのデスクトップの座を奪いつつあり、年末までには小売店の売上の大半をこれが占めるようになる。 (Dellは自社ノートPCを社内で組み立てることにしたため、実際には競合各社よりコスト高になる状況が生まれていた。)

デルの強みであったダイレクトモデル(直販モデル)がその輝きを失いつつあるということだ。 その背景は何か?

かなり以前の私のブログ記事『間接販売と直接販売(直販モデル)』「直販モデルの強みと弱み」の分析を書きました。

デルモデルの強みのエッセンスは、直販であるが故の「価格の安さ」「BTO&SCM」だった。

パソコンはこの数年で価格が劇的に下がり、よりコモデティ化・家電商品化した。 ノートパソコンでさえエントリーモデルは今や6万円台から買える。(数年前は15〜20万円だった。)  ここまで低価格になると、BTOを活用し要らない機能は外すなどカスタマイズして、安く買うというネット直販の強みが色褪せてくる。

パソコンの高性能化でエントリーモデルでも、一般の個人ユーザには必要十分な機能・性能となった。 最新OSのWindowsビスタ搭載でメモリ1GBも搭載しているパソコンが5〜6万円から買えるのだから、BTOでカスタマイズするメリットも薄れてしまった。 

低価格化→コモデティ化することは、家電量販店間の価格競争も相まって、間接販売チャネルがより強みを発揮することになる。 価格もそれほど差がないなら、デルのWebサイトより、ヨドバシカメラ、ヤマダ、コジマなど家電量販店で、色々なメーカーのパソコンを触って見比べて、店員の意見を聞いて買う、かつ、ポイントも付く方がお買い得感を感じる、という人が多くなる。

デルのもう一つの強みは、BTO/SCM(注文生産による製品在庫レス化)とCRM(お客とダイレクトにつながることにより売れ筋モデルの傾向や顧客の好みの変化などをきめ細かく把握ができる)だった。

デルを追い抜いたHPや国内ではNEC、富士通などは、元々間接販売主体のメーカーだったが、デルを研究し尽くして、間接販売に合った効率的なBTO&SCMを確立したこと。また、ネット直販サイトも立ち上げ、店頭販売とネット販売を併用して、ネットユーザーの取り込みも図り、デルとの価格差が縮まったこともあり、デルの圧倒的優位が崩れつつある。

デルが10年前にダイレクトモデルで価格破壊を起こし、その後の年々のパソコンの大幅な低価格化/コモディティ化が、ネット直販と間接販売(店頭販売)との価格差を大幅に縮めた。 その結果、個人向けは無店舗でネット直販主体のデル、元々、企業向けに強くリアルの営業部隊は企業向けに集中していたデルにとって、逆風となってきたのは皮肉である。 強みが一転して弱みに変わりつつある。

デルのCEOに復帰したマイケル・デル氏はどのような起死回生策を打ち出すのか興味深い。 しかし、コモデティ化してしまった商品では、結局、価格勝負から抜け出せないでシャア争いの消耗戦となってしまう例が多い。 デル・モデルの輝きを取り戻すのは容易ではなさそうである。

パソコン5万円時代という、一段下の価格レンジでも、ネット直販とBTO(注文生産)&SCM+アルファによる新たな価格優位性を取り戻せるかがKeyになりそうだ。 それができないならば、間接販売チャネルを取り込む業界再編しか残されていないかもしれない。

圧倒的な強さを誇ったデル・ダイレクトのビジネスモデル(ref3参照)も約10年で大きな壁にぶち当たった。 そう言えば、最近は「BTO」という言葉もあまり見聞きしなくなり、デルのWebサイトでも「BTO」の文字が消えてしまった。  時代の変化の速さを感じます。

ref1:『Vista』は Dell を救うか?

ref2:お手本はアップルストア?--デルが直営小売店舗を展開へ

ref3:米国PC産業の新潮流:デル社ダイレクトモデルの衝撃 (by梅田望夫氏)→デルダイレクトモデルが注目された頃の1998年のレポート

ref4:直販(ダイレクト)モデルの強みと弱み

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1. コジマ電機  [ コジマ電機 ]   2007年02月17日 01:29
突然のTBすいません。コジマ電機サイトを運営しております、愛子と申します。 よろしくお願いします。
2. アマゾン 家電  [ アマゾン 家電 ]   2007年02月17日 09:50
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3. 毛糸やオーガンジー製のアップリケフラワーがキュートなVarious(バリアス)製実用的トートバッグA(ピンク)  [ ハンドメイドバッグ、ハンドメイドバッグで個性的に ]   2007年07月01日 11:16
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この記事へのコメント

1. Posted by choiwaru_diet   2007年02月17日 20:19
久しぶりに専門分野のPC関連記事、読まさせて頂きました。
本当に10年で世界が全く変るという感じですね。
我々団塊の世代にとって、あと10年後の70歳前後の世の中がどのようになっているかが興味深いですね。
2. Posted by エルメス バッグ   2013年12月27日 17:28
“Oh well, Thackeray and George Eliot”? and her friend pleasantly bethought himself. “I’m afraid I haven’t read much of them.”
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