2005年06月18日
設計の海外移管のやり方
パソコンの海外生産（６）
設計の海外移管のやり方
第２世代の９８ＦＥＬＬＯＷの海外調達を台湾ＯＤＭの「Ｅ社」に委託することが決定して、日本設計の９８ＦＥＬＬＯＷのマザーボードの設計を台湾にトランファーする現地化作業が具体的に始まりました。
海外調達の最大の目的は勿論、原価低減です。 日本で設計したマザーボードをどのようなやり方で台湾ＯＤＭへ移し、現地化設計＆生産を立ち上げたのか、その基本的な考え方をご紹介します。
海外からのＯＤＭ（設計込みの生産委託・調達）の委託レベルとして次のような３段階があると考えれられます。
＜レベル１＞デザイン・コンサイン（完全設計委託）方式
基本仕様書を渡し、それ以降の回路設計・プリント基板設計、部品選定、評価などの実設計と検査、生産を全てＯＤＭ側に任せる。
＜レベル２＞モディファイ（部分修正設計）委託方式
回路設計と部品選定までは日本サイドで実施し、海外現地（この場合は台湾）で安い部品へ切り替えや、回路変更含めてＶＥ設計を行う「モディファイ（一部修正）設計」以降を任せる。
＜レベル３＞デッド・コピー（丸写し）委託方式
日本サイドの回路設計、選定部品をそのまま変えることなく、デッドコピーして、海外で組立生産する。
９８ＦＥＬＬＯＷの場合は、前記の＜レベル２＞の方式としました。その理由は次のとおりです。
�� 初の海外ＯＤＭ立ち上げであり、リスクヘッジや国内稼働率維持を含めて生産比率を国内７：海外３の計画とした。 従って、設計は１本として、国内設計ドキュメントを海外生産に移すことが、設計品質確保、互換評価・システム評価の効率化、生産品質確保などの面で有利であること。
�� 海外生産の低価格化メリットを出すためには、現地（台湾）で安い部品を採用し実装できるように一部設計変更しつつ、海外調達に伴うオーバーヘッドコストを最小化することが必要条件となる。 即ち、日本で設計＆評価済みの設計資産を極力活かして、国内と海外２重化によるオーバヘッドを極力少なくすることが必須となる。（参考記事：海外調達の損得勘定（１））
�� 日本で培った「もの造りのノウハウ」を活かしたまま、国内並みの設計と生産のレベル維持してリスクが少なく運用ができる。
（その当時は台湾ＯＤＭにとっても日本の品質管理を学べるために大歓迎だった、最近はレベル１方式でないと台湾ＯＤＭも受けなくなってきているようです。）
次に、重要な考え方は「日本の設計ノウハウと品質レベル」を維持しつつ、コスト低減の効果を出していくことです。
具体的には、マザーボードの設計品質、ノウハウを作りこんでいる実体物は「部品実装レイアウト」と「プリント基板の配線パターン設計（ガーバーデーターと呼ぶ）」です。
ＣＰＵとメモリ、各ＬＳＩ間の高速なバス信号間の信号サンプルのマージン設計の織り込み、ＡＣノイズ耐力やＶＣＣＩ規格マージンなどは、これによって決まってしまうからです。 どんな環境でも安定な動作や何年も故障なしに使える「パソコンの実力」は、ここら辺りのマージン設計の良し悪しで決まってきます。
（蛇足ですが、ＰＣ改造マニアの方が標準のＣＰＵを取り外して、市販のより高速なＣＰＵに交換し、性能アップして楽しんでおられますが、どこまで高速化できるかなども、マザーボードのマージン（余裕度）設計の良し悪しが大きく左右します。）
このマザーボードの部品実装レイアウトとパターン設計は変えないことで台湾に移しました。 そうすることにより、ノウハウを埋め込んだマザーボードがそのまま移管できることと、多大な工数を掛けていた「互換評価」も完全に２度手間にならずに効率化できることになります。
一方で、台湾が日本よりも安かった部品（プリント基板、抵抗・コンデンサー、コネクター、スイッチなど）はパターン設計はそのままで良い、または、取り付けパッドの一部修正でよく「設計造りこみノウハウ」に影響がないものは積極的に取り込みました。
また、日本の方が安かった部品（ＣＰＵ、ＰＣ９８専用ＬＳＩ、一部メモリなどは日本からの支給コストを加味しても安かった）は日本から支給することとしました。
つまり、「台湾と日本の良い処取り」戦略です。
但し、台湾が安い部品を採択するには慎重に採否判断をしました。 特に、コネクタ、コンデンサー、抵抗、トランジスタなどは単に安いからだけで使うと後で痛い目に会うことが多くありました。
９３年当時は、海外調達の部品の信頼度については、今以上に注意が必要でした。
台湾からの提案部品については、その評価データー、部品メーカーの信用度のチェックは欠かせません。 なかでもコネクタ類は挿抜回数耐久性、コンタクト部分の材質など事前に日本側でも単品評価をしておくことが安全でした。
現在の台湾の部品メーカーの状況はよく承知していませんが、当時は、得体の知れない従業員１０人以下の小さな家内工業的な部品会社も多く、台湾のＯＥＭ・ＯＤＭのなかには単に最安値だけで、そのような会社の部品を選んでいる場合も多かったからです。
�� 海外生産の低価格化メリットを出すためには、現地（台湾）で安い部品を採用し実装できるように一部設計変更しつつ、海外調達に伴うオーバーヘッドコストを最小化することが必要条件となる。 即ち、日本で設計＆評価済みの設計資産を極力活かして、国内と海外２重化によるオーバヘッドを極力少なくすることが必須となる。（参考記事：海外調達の損得勘定（１））
�� 日本で培った「もの造りのノウハウ」を活かしたまま、国内並みの設計と生産のレベル維持してリスクが少なく運用ができる。
（その当時は台湾ＯＤＭにとっても日本の品質管理を学べるために大歓迎だった、最近はレベル１方式でないと台湾ＯＤＭも受けなくなってきているようです。）
次に、重要な考え方は「日本の設計ノウハウと品質レベル」を維持しつつ、コスト低減の効果を出していくことです。
具体的には、マザーボードの設計品質、ノウハウを作りこんでいる実体物は「部品実装レイアウト」と「プリント基板の配線パターン設計（ガーバーデーターと呼ぶ）」です。
ＣＰＵとメモリ、各ＬＳＩ間の高速なバス信号間の信号サンプルのマージン設計の織り込み、ＡＣノイズ耐力やＶＣＣＩ規格マージンなどは、これによって決まってしまうからです。 どんな環境でも安定な動作や何年も故障なしに使える「パソコンの実力」は、ここら辺りのマージン設計の良し悪しで決まってきます。
（蛇足ですが、ＰＣ改造マニアの方が標準のＣＰＵを取り外して、市販のより高速なＣＰＵに交換し、性能アップして楽しんでおられますが、どこまで高速化できるかなども、マザーボードのマージン（余裕度）設計の良し悪しが大きく左右します。）
このマザーボードの部品実装レイアウトとパターン設計は変えないことで台湾に移しました。 そうすることにより、ノウハウを埋め込んだマザーボードがそのまま移管できることと、多大な工数を掛けていた「互換評価」も完全に２度手間にならずに効率化できることになります。
一方で、台湾が日本よりも安かった部品（プリント基板、抵抗・コンデンサー、コネクター、スイッチなど）はパターン設計はそのままで良い、または、取り付けパッドの一部修正でよく「設計造りこみノウハウ」に影響がないものは積極的に取り込みました。
また、日本の方が安かった部品（ＣＰＵ、ＰＣ９８専用ＬＳＩ、一部メモリなどは日本からの支給コストを加味しても安かった）は日本から支給することとしました。
つまり、「台湾と日本の良い処取り」戦略です。
但し、台湾が安い部品を採択するには慎重に採否判断をしました。 特に、コネクタ、コンデンサー、抵抗、トランジスタなどは単に安いからだけで使うと後で痛い目に会うことが多くありました。
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この記事へのコメント
1. Posted by nike sb 正規店 2013年10月20日 12:22
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