2005年06月10日
海外調達の損得勘定(2)
前回、海外調達のコスト効果のシュミレーション例(台湾、マザーボード)を示しました。
内外価格差、つまり、日本に比べて台湾が安い部品の価格差や人件費差をダイレクトに反映出来る訳ではなく、日本に持ってきて売る場合に、輸入関連諸経費や色々なオーバーヘッド費用を差し引いた部分が実質的なコスト低減額となることに留意が必要です。
それ以外にも、海外調達の損得勘定で考慮しなければならない重要な点があります。
それは、「国内の工場稼働率」の問題と「海外調達のリードタイムの長さ」の問題です。
1つ目の「国内工場稼働率」の問題は、海外生産に移したために国内の工場が空洞化して稼働率が大きく低下するのでは本末転倒であり、総合的な損得勘定が合いません。
国内工場には、多くの従業員や生産設備があり固定費用が発生しています。 その固定費用を回収して適切な利益を出し続けるためには、工場の生産稼動をある水準以上に保つ必要があります。
また、大きな会社の工場では、地場に多くの2次、3次外注の協力工場を抱えている場合が多く、企業城下町的な共存共栄の状況になっています。
つまり、国内工場をたたんで海外シフトをするならば別ですが、国内工場の稼動を維持しつつ、海外調達を併用して、どのようにコストメリットを出していくかの方法論が重要となります。
2つ目の「海外調達のリードタイムの長さ」の問題は、その業種の市場特性によっても影響度が変わってきますが、パソコンの場合は、その商品特性から所要変動が非常に激しい特性があります。(図2:パソコンのライフサイクルを参照)
年4回の新製品リリースのホット・シーズンでは生産ラインをフル稼働しても追いつかない状況ですが、新製品発売後の需要のピークは2〜3ヶ月しかありません。 また、その間の所要も大きく振れて、所要予測がなかなか当たらないことが多いのです。 先週の工場稼動率は100%だったが、今週は50%以下というような変動が大きくなることもよくあり、「平準化生産」がなかなか難しい特徴があります。
一方で、その当時は、パソコン海外調達のリードタイムは、部品の仕込みに1ヶ月〜2ヶ月、生産に2W、輸送に3〜4W(SEA:船便)掛かりました。
(当時はAIR(航空便)はSEA(船便)の3〜4倍の料金が掛かりました。)
従い、海外調達の発注量決定は国内出荷時点より、2ヶ月〜3ヶ月前に決定する必要があります。 そのリードタイムの長さでは、国内のパソコン需要のダイナミックな変化に追従できない問題があります。 また、海外での装置完成から販売店へ納入まで1ヶ月程度も掛かる(寝かせる)ことによる無駄、鮮度ロスの発生もあります。
さらに、98FELLOWの超速開発の記事にもありますように、新製品リリース前には数万台規模を2W程度の短期間で作り溜めする必要があり、海外生産のリードタイムの長さでは無理があります。
上記のような海外調達の問題から、国内生産と海外生産の組み合わせ方の戦略をよく検討する必要があります。
98FELLOWの場合は、海外調達比率を、総ライフ所要見込み台数で国内生産7割、海外生産3割の計画として、海外生産分は新製品リリース後の安定需要期のベース台数分として生産計画に組み入れてコスト低減効果を出しつつ変動を受けない計画生産とし、作り溜めや所要変動のダイナミックな生産対応は国内生産で迅速に追従させる方針としました。
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